マリッジリング〜絶対に、渡さない〜

 
『あの子に聞こえたらどうするんだよ…可哀想だろ』


困った表情を浮かべ、大地は小さくため息を吐いた。
聞こえたら、可哀想…思わずハッとして前方に目を向けると、リュウ君がなんだか不安げな様子でこちらをチラチラ見ている。

…私は、何をしてるんだろう。

リュウ君の環境を考えたら、ボールくらい大目に見てあげるべきだったかもしれない?
シングルマザーで家計は大変かもしれないし、欲しいものも普段はいつも我慢してるのかもしれない。

だから、優しい目で見てあげろ。
大地はつまり、そういうことでとった行動だったんだよね?



『なんか、今日変だぞ?』

『…変?』

『亜紀らしくない』


私らしいって…何?
私は普段、どんな私なの?
そんな風に言われたら、まるで今の私の方がおかしいみたいじゃない。


『でも、ボールを勝手に買ったのは俺が悪かった』

『えっ?』

『亜紀に確認するべきだった。ごめん』

『ううん…』


こう素直に謝られてしまうと、苛立ちの行き場がなくなってしまう。
そして行き場をなくした感情は、胸の中に溜まったまま。


『私も…ごめん』

私は、心とは裏腹な言葉を口にしていた。