マリッジリング〜絶対に、渡さない〜


なんでこうタイミングが悪いんだろう。

あと五分…いや、せめて一分でもいいからもう少しだけ時間を空けて現れて欲しかった。

大地に、ちゃんと伝えておきたかったんだ。
彼女に対して、何故だか抱いてしまう不安な気持ち。
カッコ悪いけど、私はきっと嫉妬しているのかもしれないと。
素直に伝えておきたかった。

だけど、それができないまま。


『遅くなってごめんなさい、途中でリュウがトイレに寄ってて』
『ぜ、全然…まだ、サイズの確認してたところだったから』


結局、リュウ君ママとリュウ君は私たちと再び合流して。


『亜矢ちゃんのスニーカー可愛いね!それにするの?』
『うん!ママと選んだんだよ!』
『そうなんだ〜!?ママも亜矢ちゃんもオシャレさんだね〜!』


そう言いながら、ごく自然に私たち家族の中に溶けこんできた彼女の姿を、顔では笑顔を作りつつも心では冷ややかに見てしまっていた。

彼女の全てを知ってるわけではない。
まだほんの一片しか見えていないのはわかってる。

だけど…昨日の行動も含めるとどうしても苦手なタイプな気がして、これ以上距離を縮めたいとは到底思えなかった。

自分の中に、こんなダークな部分があったなんて。

私は性格が悪いのかな…子供たちの靴を購入して腕時計を確認すると、想定外の時間のズレに『はぁ…』と重いため息がこぼれた。