マリッジリング〜絶対に、渡さない〜


苛立ちが、あっという間に私を飲み込んでいく。

大君?何それ?
俺は別に大丈夫だけど?

ボッと火のついた心はメラメラと燃え上がり、冷静さを失っていく。


『…んなの、私に聞かないでよ』

気付けば冷たい声で、そう言い返していた。


『え?亜紀?』
『何?』
『いや、何で…怒ってんの…』
『別に?怒ってないけど』


そう言いながら、私はじろっと大地を睨む。
正直言うと、めちゃくちゃ怒ってる。
そもそも、名前で呼ばれてる意味がわかんない。
昨日は大君なんて、そんな呼び方はされてなかったはずだ。

だいたい、リュウ君ママもどうなの?

百歩譲って「大ちゃん」ならまだわかる。
みんなだいたいそう呼ぶし、昨日いたメンバーもそうだったし。
だからそう呼ぶのなら、違和感なく自然だと思えただろう。

だけど、彼女は違った。
まるで、他人と違いをつけるかのように自分だけ別の呼び方で呼んでいる。

何故か、そう思えてならなかった。