『ちょっ、ちょっと…何?』
『ん?亜紀が、可愛いなぁって』
『何言ってるの?からかわないでよ』
『あれ?じゃあ、俺の自惚れ?』
大地はそう言うと、私の目をジッと見つめて。
『亜紀ってやきもち妬いた時、右の眉毛を上げながら、別に?ってよく言ってたから。もしかして今日、リリちゃんにちょっとでも妬いたのかなって』
『な、何で私が…』
『んー、あの子、初対面なのにわりと打ち解けるの早かったじゃん?それに、結局亜紀はずっと椅子に座れてなかったし』
図星過ぎる大地の言葉に、本当はひどく動揺していた。
だけど、素直にそれを認められないのは、増えてしまった年齢のせい?
それとも、過ごしてきた年月のせい?
『バ、バカじゃないの?そんなことでやきもちなんて妬くわけないじゃん。自惚れ過ぎ』
再び顔を上げた私の口から出てきたのは、本心とは違う言葉で。
もっと若い頃だったら。
これが、十年前だったなら。
『結婚して十年だよ?もうくだらないやきもちなんて妬くことないってば』
もっとちゃんと素直になれていたのかもしれないし、大地に不満げな表情をさせることは、なかったのかもしれない。
『くだらないって…』
『えっ?』
『いや、何もない。先寝るね、おやすみ』
心に隙間を与えることだって…なかったのかもしれない。



