マリッジリング〜絶対に、渡さない〜


すぐそばから降ってきた声に振り向くと、温かい手が私の髪に触れてきた。

『風呂、行ってきたら?』

いつもと変わらない声に、何故かホッとする心。

『…うん』
『どうした?やっぱ変だぞ?声も元気ないじゃん』

心配そうに私を見下ろす大地の表情に、胸がキュッと締め付けられる。
大地は、やっぱり大地だ。

私の声を聞いただけで少しの変化にも気付いてくれる、優しい夫。

情けない。
他人と比べて、勝手に嫉妬して。
劣等感にモヤモヤして落ち込んで。
本当…私って格好悪いな。


『別に?ちょっと眠かっただけ。お風呂、行ってくるね』

そう言って立ち上がろうとすると、大地は何故かクスッと笑って私の肩に手を置いた。
意味深なその笑みに、思わず首を傾げる。

すると肩に置かれていた手が、今度は私の髪を優しくクシャクシャにしてきた。