マリッジリング〜絶対に、渡さない〜



「お!美味そう!」
「久しぶりだなぁ、鍋」


火にかけておいた鍋をテーブルに運んだタイミングでちょうど終わった釣り番組。

匂いにつられるように席についた大地と慎ちゃんを見て冷蔵庫からとりあえずのビールを出すと、景子が棚からグラスを出して一緒に運んでくれた。


「リュウ君ママも、ビール飲めますか?缶酎ハイとか焼酎、ウイスキーなんかも一通りはあるんだけど、お酒飲めなかったらジュースとかお茶もありますよ」


テーブルにビールを置きながらそう声をかけると、リュウ君ママは返事よりも先に缶ビールのプルタブを開け、パパ達三人に注ぎ始めた。


「お!サービスいいねー」
「って、何のサービス」
「お酌してくれるなんてありがたいってことだよな?勇太」


お酌をされる三人は上機嫌な様子で笑みを浮かべている。
そりゃあこう嬉しくもなるか。

知り合った頃は、私達も夫を立て、パパ達を立て、みんなの手前お酌をしていたこともあったけれど。
いつからか、勝手にどうぞ的な手酌のセルフスタイルになった。

何故なら、この三人はよく飲むし、飲み始めると長い。
グラスが開くたびにその都度注ぐ相手をするのは面倒になったからだ。

好きに飲んで食べてください。
それが、私達三家族の食事時のスタイルだった。