「すみません、突然お邪魔してしまって」
一度家に戻ったリュウ君ママが我が家のリビングに入ってきたのは、表玄関で話をしてから十五分後のことだった。
「いえいえ、本当に気は遣わず。もうご飯もはじめるんで、このへん適当に座ってください」
そう言ってダイニングテーブルの椅子を引くと、リュウ君ママは周囲を気遣いながら椅子に腰をおろし、晩ごはんの最終準備をするため私はキッチンに入った。
しかし、どうしてわざわざ?と、カウンター越しに見える後ろ姿にちらりと視線が向いてしまう。
先ほどまでは、長袖のカットソーにジーンズ姿のラフな格好だったのに。
一度帰宅したリュウ君ママは、何故かワンピースに着替えて我が家に現れたのだ。
それも、膝上十センチほどの丈の短い黒のワンピースで、肩から手首にかけてがレース素材になっているセクシーなものだった。
「ねぇ、見て亜紀、勇太のあの鼻の下」
「へっ?」
隣に立つ景子に肩をつつかれ、自然と視線が勇ちゃんに向く。
するとそこには顔の表情がゆるゆるになった勇ちゃんの姿があった。
「あいつ何ヘラヘラしてるんだか。慎ちゃんと大ちゃんはソファにいるっていうのにさ」
その言葉でソファに目を向けると大地と慎ちゃんは肩を並べて釣り番組を見ていた。
玲ちゃんは子供部屋にテーブルを広げ、子供たち用の食事の準備をしている。
「っていうか、聞いてたとおり本当に可愛いね、リュウ君ママ。お肌ぴちぴちだし若いし、そりゃ鼻の下も伸びちゃうわ」
そう言いながら、改めてリュウ君ママの後ろ姿を見つめる。
ふわふわのセミロングの髪に、華奢な背中。
先ほど表玄関で話した時に向き合った感じだと、背丈は百五十センチあるかといったところだった。
顔も、可愛い。
くりっとしたパッチリ二重に綺麗に上がる口角は、満点をあげられるような笑顔だ。
可愛らしさであふれているリュウ君ママ。
だけどそれは私たち同性からは少し羨ましく思えるのか、そうさせるのはその可愛さにあからさまに態度を変える男性のせいなのか。
勇ちゃんを見ていると景子の苛立ちもわからないでもないな…と小さく息をついた。



