『どうしたんですか?亜紀さん顔怖い〜』
感情を抑えるために数秒黙っていたら、彼女はふざけたように私に言う。
『あ、もしかして亜紀さんも常識が〜とか、親なら普通は〜とか、そういうこと言うタイプですか?』
『べ…別に、そんなんじゃ…』
『良かった〜!元旦那もだけど、そういう人って根本的に苦手で。普通の感覚って人それぞれでしょ?だから自分の思考を押し付けるなって思っちゃうんですよね』
次から次に出てくる言葉。
小さく息をついた私はコーヒーを飲んで心を落ち着かせる。
普通の感覚は、人それぞれで。
家庭の在り方も、それぞれだ。
リュウ君のことは気にはなるけれど、これ以上はもう、この人に踏み込むことはやめよう。
そう思い無理矢理にでも話を切り上げて、もう帰ってもらおうと口を開いた…次の瞬間。
何故か玄関の方から「ただいま」という大地の声が聞こえた。
どうしてこんなに早く?と、慌てて壁時計に目を向けると、時刻はまだ三時半で、大地が帰宅するにはあまりにも早すぎる時間だった。



