『あの、さっきの男の人は誰なの?』
『えっ…と…』
見知らぬ人を相手に、私だって怖かった。
だけどわざわざ仲裁に入り助けた上、家にまで駆け込まれたからには聞かせてもらわなければ腑に落ちない。
『一体どういう関係なの?』
再度問うと、リュウ君ママは気まずそうにモゴモゴと口を開く。
『旦那です…』
『えっ?』
『別れた、元旦那で』
『そう…なんだ』
景子とのランチ中に聞こえてきた会話を思い出した。
勝手に耳にしていたけれど、元旦那さんってことはあの人が暴力をふるうDV男だったってこと?
だとしたら、助けに入ったことは間違いじゃなかったんだ。
何かが起きていたかもしれないと思うとゾッとする。
咄嗟にうちの家に逃げ込んでしまったことも、焦りや恐怖から仕方なかったのかもしれない…そう思い俯く彼女に声をかけた。
『今、時間ある?』
『えっ?あ、ありますけど…』
『良かったら上がって。もしかしたらまだあの人そのあたりにいるかもしれないし…』
『えっ、いいんですか!?』
『温かいものでも淹れるわ』
お人好しかもしれないことはわかっていた。
けれどこの時の私は、彼女を放っておくことが出来なかった。



