「うわぁ、綺麗…」
思わず溢れた、ため息のような声。
四人掛けにしては大きなテーブル席の個室。
窓ガラスの向こうには、広大な夜景のパノラマが広がっている。
「どう?綺麗だろ」
「うん…綺麗。めちゃくちゃ綺麗!ね!亜実、亜矢すっごいキラキラだね」
ウェイターが微笑みながらドアを締めた後も、港町の夜景を眼下に私はしばらく外を見続けた。
横浜の象徴であるベイブリッジやみなとみらい。
それをこんな場所から一望してるなんて、夢みたいだ。
「ねぇ、大地」
「ん?」
「夢じゃないよね?」
「へっ?何、夢って」
すでに椅子に座っている大地はクスッと笑ってこちらを見ている。
「ママも早く座って座って!」
急かすような亜実の声に、やっと窓際から足が動いた私は空いている大地の正面側の椅子に静かに腰掛けた。



