『すみません…』
冷静さを取り戻したのか、男はそう言って謝るとリュウ君ママから距離を取るように一歩後ろに下がった。
するとその隙をついたかのように、リュウ君ママは突然駆け出して。
どういうわけか、我が家の表玄関に一直線に向かうとそのまま扉を開けて中へ入っていく。
『おい、リリカ!』
そしてそんな彼女を追うように、男も我が家へ向かって走っていく。
えっ、一体何なのこの状況…気が動転しそうになりながらも、私は慌てて男に向かって大声をあげた。
『警察呼びますよ!』
叫ぶようにそう言うと、男はぴたっと静止してこちらを振り返った。
『す、すみません…』
『一体何なんですか?』
『いや…えっと、ご迷惑をおかけして、申し訳ないです。すぐ帰るので、警察は…やめてください』
本当に申し訳なさそうな顔で謝る姿に、それ以上はもう何も言う気になれなかった。
彼女に対しては怒りの感情があるにしても、向き合った目を見ていると、とても悪い人には見えなくて。
『じゃあ…早く、お帰りください』
そう言って帰るよう、諭してしまった。
すると男はもう一度ぺこっと頭を下げると、足早にその場から去っていった。



