『あ…ありがとう、わざわざごめんね』
一応、ひとこと礼だけは言っておいた。
『いえ、本当は大君が帰ってきている時間に持ってこようかと思ってたんですけど』
だけど手渡されながら言われたその言葉に、私の心はドクンとわかりやすく嫌な反応をする。
『でも、ちょうど帰りに今、亜紀さんがいたんで』
『…そう』
『大君にもありがとうって伝えておいてください』
彼女はそう言うと、私に向かってぺこっと軽く頭を下げた。
『ママー!おうち入ってるね!』
『はーい!』
『じゃあ、亜紀さん。また…』
亜実の声に目を向けていると、彼女はそう言ってスッと横を通り過ぎていく。
私も手にした上着に視線を落とし、家の中に戻ろうと表玄関の扉に手をかけた。
『おい!』
だけど次の瞬間、突然響いてきた声に驚いて振り返ると、リュウ君ママが見知らぬ男に肩を掴まれていた。
『いっ、いきなり何なの!?どうしてここが…』
『電話もLEINも無視、どこにいるのかもわからない、勝手過ぎるしおかしいだろ!リュウはどこにいるんだ!』
『他人のあんたには関係ないでしょう!?』
『たっ、他人って…おまえ!』
明らかに怒った様子の男に、思わずハッとなる。
この男…さっきの黒い車に乗っていた、あの男だ。



