景子の家や玲ちゃんの家の車だけじゃなく、ご近所さんの車はだいたいは知っていて。
住み慣れた住宅街だからこそ、日常的にだいたいの車種やカラーもぼんやりとではあるが記憶されている。
だからこそ、ふと感じた違和感で視線が止まったんだと思う。
この車は、この辺りでは見かけたことがない車種だ。
こんな場所で停車しているのもあまりないことだし、珍しいな…と、亜矢と手を繋ぎながらその黒い車の横を通り過ぎようとした時。
運転席に座る男性の顔が、ふっとこちらを向いた。
年齢は、二十代半ばから後半くらいだろうか。
ゆるいパーマがあてられたミディアムヘアの若い男性は、私を見るなりわかりやすく肩を落として。
手にしているスマホに目を向けると、画面に向かってぶつぶつ独り言を言っている。
そんな姿がなんだか怖くて、亜矢の手をぎゅっと握ると足早に家の中に入った。



