「工藤様ですね、お待ちしておりました。では、ご案内いたします」
蝶ネクタイをしたウェイターが一礼した後、そう言って私たちを誘導するように進んでいく姿を見つめながら、そばにいる大地に小さな声で問いかけた。
「ちょ、ちょっと…大丈夫なの?」
たどり着いたのは、みなとみらいにある某ホテルの高層階。
店構えからして高級な雰囲気全開のお店は、中に入るとさらに優雅な内装が広がり心臓がドキンと高鳴った。
こんなお洒落なお店、久しぶりだ。
「ははっ、大丈夫じゃなきゃわざわざ予約して来ないだろ。どうした?顔が固まってるぞ」
緊張する私の表情がよほど面白いのか、大地は笑いながら私の頬を優しくつねる。
そりゃあ顔も固まる。
こんなお店で食事なんて、結婚してからは初めてのことだったからだ。
「こちらへどうぞ」
前を歩いていたウェイターは、そんな私の心境など知る由もなく、そう言いながらドアを開けた。
亜矢と手を繋いでいた大地は、私と亜実に先に入るようにとそっと背中を押してきて、ドキドキしながらも私はその先に踏み込んだ。



