『リリカちゃんおはよー!』

そばにいた玲ちゃんは、ヒラヒラと手を振りながら彼女に笑顔を向ける。

そんな横顔を見ていると、その向こう側にいる景子と目が合った。

大丈夫?と言いたげな様子で軽く目を見開いた景子に小さく頷く。

そして口角を上げると私も笑顔で彼女に目を向けた。


『玲ちゃん、バスのお見送り?』

『うん、リリカちゃんは?リュウ君送ってきたの?』


ごく自然に始まった二人の会話に思わず驚き、再び景子と目と目が合う。


『うん、今保育園に送って来たところ』

『どうだった?初登園』

『やっぱり初めてだからか、リュウはちょっと緊張してた』

『ははっ、そりゃそうだよー、初めてだとドキドキしちゃうって』


一体いつの間に、こんな会話をするほど二人は親しくなっていたんだろう。

保育園に入園?そんな話、今初めて知った。
そして私と同様にこの件を知らなかったらしい景子がすぐさま口を開いた。


『リュウ君、保育園入ったの?どこの保育園?』

『ひかり保育園です。シングルだし、年齢が五歳だし、ちょうど空きもあったみたいで。申し込んだら、わりとすんなり入れました』

『そうなんだ。保育園って結構激戦って言うし、早めに入れて良かったね』

『本当はみんなと同じ幼稚園に入れたかったんですけどね…。今は、我慢してもらいました』


景子とのやりとりを黙って聞いていたその時。
彼女の言った”今は我慢”という言葉に、何故かふと引っかかってしまった。