だけど、それも悪くない。
「あーきのゆーうひーにー」
「てーるーやーまもーみーじー」
家族四人で、子供たちの歌声を聴きながらゆっくりと進んでいく駅までの道のり。
結婚して、夫婦間の形が少しずつ変わっていたとしても。
今ここにある幸せは、揺るぎなく確かなもので。
大地がいて、亜実がいて、亜矢がいて…私がいる。
そんな今が、改めて大切だと思った。
「二人とも歌上手くなったなぁ」
「うん、かなり上手くなったよね」
子供たちを挟んで交わす会話。
目と目が合って、二人で笑い合った。
手は繋がれていなくても、同じ歩幅で歩いている。
この幸せがずっとずっと続けばいい。
結婚して十年。
願うことは、ただそれだけだった。



