マリッジリング〜絶対に、渡さない〜

 
だけどそんな苛立ちは、時間と共に変化していった。

最初はイライラした怒りで頭がいっぱいで。
帰ってきたらまず何て言ってやろうとか、クッションを投げつけてやるとか…そんなことばかりを考えていたのに。

三十分、一時間、さらに一時間…と過ぎていくにつれ、イライラは不安に変わっていた。

もしかしたら、何かあったんだろうか。
何か事故や事件にでも巻き込まれたんじゃないか。
ひょっとしてスマホを落とした?
どこかで倒れていたらどうしよう。

心配でたまらなくなり、大地の勤める新栄製薬の現同僚でもあり、私の元同僚でもある葉山君に電話をかけることにした。


『…そ、そうなんだ。ううん、大丈夫。うん…ありがとう、じゃあ…』


だけどその電話は、結果的として私をさらに不安にさせるものになった。

大地は今日、朝一番に得意先に直行後、午後から出社。

再び午後三時過ぎに会社を出る時には今日は営業先から直帰予定と伝えていたらしい。


葉山君は何かあったの?と心配していたけれど、余計なことを言うと後々面倒ことになりそうだと思い、何も言わずに短く電話を切らせてもらった。