マリッジリング〜絶対に、渡さない〜

  
『上着は…午前中にクリーニング屋さんに出してきて、仕上がりは最短でお願いしたので、明日の午前十一時頃には取りにーーー』


私を見上げながら話す彼女に、間髪入れずに言葉を返す。


『クリーニングの話はいいから。私が聞きたいのは、大地がついたっていう嘘について。誤魔化すような真似はせず、聞かせてもらえるかしら』


苛立ちが、どんどん私を支配していく。
震える手。バクバク響く心臓の音。

カーッと湧き上がってくる感情が、顔や体を熱くしていく。
自分が自分じゃないみたいで、なんだか怖かった。


『別に、誤魔化したりはしませんよ』


怒りでいっぱいの私とは違い、彼女はとても冷静だった。
ついさっきまでは、私の追求に焦り、おどおどしていたように見えていたのに。

涼しい顔で、私を見つめ口を開く。


『私のリップの色が、上着についたんです』