『あとスーツの上着のことなんですけど、聞いてますか?』
『あぁ、うん。昨日大地が話してくれた。吐いて大変だったみたいだね、リュウ君』
ちゃんと本人から聞いている。
それをアピールするように私はさらに続ける。
『だからクリーニングとか気にしないで良かったのに。子供のことだしって昨日の夜大地と話してたんだよ』
私たちは互いに何でも話をする、オープンな夫婦。
だから、誰にも入る隙なんてない。
だからこれ以上、私たちに近づかないで。
そう願いながら微笑むと、彼女は丸い目を見開いて驚いたように口を開く。
『リュウが吐いたって、大君、そう言ってたんですか?』
『えっ?どういう…意味?』
『やっ、あっ…すみません、何でもないです』
あからさまに誤魔化すようなおかしい態度。
黒い感情が、胸の中に広がっていく。



