『そんな…わざわざお礼なんていいのに』
頭を下げられたせいで拍子抜けし、困惑しつつも渡された紙袋に視線を落とす。
紙袋の黒地に映えるGINZA ROLLというシルバーの文字。
GINZA ROLLといえば、銀座にある有名なロールケーキのお店だ。
お礼のために、わざわざそこまで買いに行ったの?と、正直驚いて紙袋に目が止まっていた。
『いえ、こういうのはきちんとしておきたいんです。大君がいてくれて本当に助かりましたし』
だけどその言葉で、私の視線は再び彼女に向く。
『本当、大君って頼りになるパパですよね』
『えっ?あ、まぁ…基本…誰にでも優しい人だから』
誰にでも。
そう言ったのは、別にあなたが特別なわけではない。
そういう意味を込めてのものだった。
『そうですよね!本当に優しいし、亜紀さんが羨ましいです』
だけどその言葉は全く効果などなかったようで、明るくそう返され顔が引きつる。
私を見つめる彼女は笑っているはずなのに、その瞳の奥は笑っていない。
何故だかそんな気がして、背筋がぞくっとした。



