それなのに大地は…
『関わらないでって、何でそんな…俺が病院連れて行ったことが、嫌だった?でも、行ってあげてって亜紀も言っただろ』
『違う、それは…』
『じゃあ上着を汚されたことが嫌なのか?相手は子供だよ?しかも熱があるような…』
『だから!そうじゃなくて』
『困ってる人がいたら助けてあげる。それって普通のーーー』
『だったら!』
『な、何だよ…』
『困ってるよその家の人を好きなだけ助けてあげれば?もう、勝手にしてよ!』
完全に、勢い任せの言葉だった。
言いたかったのは、こんなことじゃなかったのに…怒った勢いで、思ってもいなかったことを口にしてしまった。
そして引くに引けなくなった私はそのままリビングを飛び出し二階に上がると、娘たちが眠る寝室にそっと入った。
寝息を立てる二人の寝顔を見つめると、途端に視界がぼんやりと歪み、ぼろぼろと涙があふれてきた。
『…っ』
どうして私、泣いてるんだろう。
この涙は、何の涙?
胸が苦しくてたまらない。
どうして私たちは、こんなことで。
あんなにつまらないケンカをしてしまったんだろう。
『…っ』
声を殺して泣いた夜。
大地は、そのまま朝まで寝室に入ってこなかった。



