だが、今では真紀は大人になり、女優として確固たる地位もそして強力な後ろ盾となる夫も手に入れた。

自分も今はただの女優のマネージャーではない。
大手芸能プロダクションの専務だ。
自分個人でプロデュースするタレントを抱えているわけじゃないし、もう俺のプライベートは注目されることはないだろう。

そろそろ自分の幸せをつかみに行ってもいいだろうか。

俺にとって朋花は真紀と全く違う特別な存在で、どちらかというと神聖な者に近い。


朋花が誰かいい男を捕まえてソイツと結婚でもしていれば諦めるつもりだった。
だが、彼女はまだ独身で。

おまけに朋花自身がのめり込むような恋愛もしていないと真紀が言っていた。
俺にまだチャンスがあるだろうか。

一度酷いことをした俺に朋花は振り向いてくれるだろうか。

ーーーー今、朋花と一緒にいるのはあのタカトの愛妻「月の姫」だ。この北海道旅行中、責任感が強い彼女はきっと姫を守るため俺が近くにいてもそれを拒めない。

悪いが、それを利用させてもらうことにする。
今を逃すともう手に入らないかもしれないだろうから。

俺は客室内のミニバーに置かれたバーボンをグラスに注ぎ、口に含むとゆっくりと飲み干した。