「怖がらせてごめん。完全に俺が悪い・・・舞い上がってた」

顔を上げバツが悪そうな表情をしている。こんな顔を見るのも初めてだし、もちろんこんなことされたことないし。

「真島さんには女だと思われてないのかと思ってたからちょっとびっくりした。・・・でも、酔ったからっていくら何でも好きでもない女と勢いでこんな事しちゃダメと思う」

「違う」

「頼む、聞いてくれ。朋花だからだ。もう我慢はやめたんだ。…今までひどい態度をとって悪かった。俺のそばにいてくれ」

「お前が好きなんだ」

息が止まるかと思った。
私を見つめる真島さんはひどく思い詰めたような表情で、今の言葉は真実なのではないかと思わせる。

「う、嘘よ」

「嘘じゃない。嘘だったのは4年前お前の前で別の女にしたキスだ」

4年前。
その言葉にひゅっと喉が鳴る。
あの日、この人は私の告白に別の女性にキスをすることで拒絶の態度を示した。

「やっぱり嘘よ」

ふるふると首を横に振ると、私の右手首を真島さんに掴まれた。

「聞いてくれ、朋花。頼む」

真島さんの真剣な表情に私の動きが止まる。

「お前が好きなんだ。もう長いこと女だと意識しているのは朋花だけだ。立場や年齢を考えたら何も言えなかった。言うことはできなかった。だけどな、」

「もう離したくない。逃がしたくないんだ。この年まで片付かなかったお前が悪い。おとなしく俺の腕に囚われてくれ」

頭の中で理解が追い付かず視線をさまよわせると、真島さんの腕が伸びてくる。

言葉より先に涙がこぼれ落ちていく。

「…ずっとあなたが好きだった」

「ありがとう。今まで辛い思いをさせてすまなかった。これからの人生かけて大事にする。こんなおっさんで悪いが覚悟して」

真島さんはおっさんじゃないよ。
涙は止まらないけれど笑顔を向けると彼の両腕にがっちりと抱え込まれて私の身も心も温かくなっていく。

ああ、わたし今とても幸せだ。