「弥生ちゃーん。ノート、見せてくれない?」
「え、またー?安藤くん、私のノートに頼りすぎだって!」
弥生と呼ばれた彼女は、頬を膨らまして怒っているそぶりを見せるものの、見た感じ本気ではないようだった。
「だって弥生ちゃんのノート見やすいし、……ね?」
「しょうがないなー」
安藤が顔の前で手を合わせると、弥生はため息をつきながらも机の中からノートを出して、安藤に手渡した。
「まただよ…」
俺は教室のドアに寄りかかって、その光景を黙って見ていた。いや、今ちょっと独り言発しちゃったけど。
「ありがとー弥生ちゃん。助かるよー!」
「はいはい。早く写してね」
「ラジャー!」
安藤は弥生に手を振り、自分の席に去って行く。
去って行く途中の奴の顔は緩みっぱなし。
……分かりやす過ぎるぞ、安藤。
でも、お前に弥生は渡さない。
だって、弥生は俺のモノだから。