学校の近くにスーパーなどはない。スーパーは学校とは反対方向にある。

「俺、スーパーになんて行ってないし、誰かと間違えたんだろ」

俺の頭の中にドッペルゲンガーが浮かぶ。俺は慌てて言った。

「変ねえ…。あんただと思って声かけたんだけど、無視されちゃったのよ!」

母さんはそう言いながら、キッチンでお昼ご飯を作り始めた。

圭太や陸だけでなく、母さんまで……?

俺の体が震えた。



翌日。学校に向かう足は重かった。

昨日の夜、家に帰ってきた父さんにまで「服屋にいただろ?」と訊かれ、弟にも「公園で見かけた」と言われてしまったからだ。

俺は家に帰ってから、一歩も外に出ていない。なのに、みんな俺を目撃している。

俺はドッペルゲンガーについて調べてみた。別にオカルトを信じているわけじゃないけど、家族が赤の他人と見間違えるはずないと思ったからだ。

ドッペルゲンガーは人と話したりしないらしい。そして本人がよく行く場所に現れるそうだ。