圭太が首を傾げながら訊ねる。俺は「はあ?」と聞き返した。

「俺、その日旅行で長野に行ってたんだぜ。お前のバイト先に行くわけないだろ」

圭太は自分の家の近くにあるそば屋でバイトをしている。何度か行ったことはあるが、その日は行っていない。

「……それがさ、お前が来たんだよ!」

圭太が小声で言った。

「十二時半くらいに、お前が一人で店に入って来たんだよ!旅行に行ったはずなのに何でだ、って不思議に思って声かけたけど、お前は変な目で俺を見たんだ。「誰?コイツ」って感じで」

俺はかばんの中からスマホを取り出し、圭太と陸に写真を見せた。長野から帰る途中に寄ったサービスエリアで、家族とソフトクリームを食べている写真だ。

「この写真を撮ったのが十二時半。俺に似た人がたまたま来たんじゃねえの?」

俺がそう言うと、陸が「実はさ、俺もその日お前を見たんだ」と言い出した。

「夜の七時ぐらいに、駅前の本屋で本を買っているところを見たんだ。最近話題のベストセラー買ってて、あんな本読むんだなって思って……」