世間は今、バレンタイン一色で。
教室で持ち上がる話題だって
みんなそればっかり。
その輪の中、あたしは一人
どうしてもついていけなくて。
それが、どんなに悲しい事なのか…。
「…壱星には、わかんないよ。」
あげる人も
もらってくれる人も、あたしには居ない。
壱星はもらう立場だし
もの好きな人も世の中には居るもんで、壱星は毎年色んな子からもらってる。
義理チョコでも、ちゃんともらってるじゃない。
「そうゆう事だから。」
恋がしたい。
ちゃんとした、想い合う恋がしたいの。
その為には
壱星と、このままじゃダメだから。
「流璃、」
ぐっと腕を引き寄せられ、あたしの歩みは遮られた。
「んもう、何、」
「俺と付き合う?」
………は?
振り払おうとした手が、ピタリと止まる。
ポカン、とするあたしに
壱星はもう一度、繰り返して言った。
「そんなに彼氏欲しいなら、俺がなってやるよ。」
風が止む。
それは、1月中旬の真冬の夜。
壱星の後ろで、星が揺れて
どこかの空に、光って消えた。

