「いい加減ウザい!」
幼なじみとか
腐れ縁とか
そんな馴れ合いが欲しいんじゃない。
あたしが
欲しいのは―――…
「わかった。」
「…え、」
そこまで言って
あたしは壱星の顔を見上げた。
「もう来ねぇよ。」
「…壱、」
傷ついたような顔で
ポケットに手を入れた壱星。
その瞬間、ようやく自分が口にしてしまった事の重大さに気が付いた。
…だけどもう遅い。
後戻りなんて、もう出来ない。
「お前と、幼なじみにならなきゃよかった。」
そう呟く背中が遠ざかって。
「こんな関係、ぶち壊してやりたかったのに。」
「壱星…。」
「…じゃあな。」
振り返る事なく、ひらりと手を振った壱星は
そのまま教室を出た。
あたしは立ち尽くし、その後ろ姿を黙ったまま見つめて。
ピシャン、と閉じた扉が
再び開かれる事はなかった。

