流星サイダー



「てか、何見てんの?」


ガサガサと紙袋を漁っていたあたしに
壱星がテーブルを指差して、「それ。」と言ってくる。

はっと我に返り、慌ててそれを隠して答えた。



「な、何でもないっ!」

「もしかして俺にくれんの?」

「は!?何でよ!」

「何でって、俺、お前の彼氏だから。」

はぁーーー!?



背中に隠したそれは、バレンタイン特集が掲載されてる雑誌。

クラスで盛り上がってる話題に、少しでもついていけるようにと読んではみたものの…。



あげる相手もいないあたしには
正直、眠くなる程どうでもいいような内容で。

そうして浸っていた妄想の世界に
堂々と潜り込んで来た、このサイダーバカ。


「あげるもなにも、壱星甘いの嫌いじゃん。」

大体、彼氏って本気?
そう聞きたかったけど、何となく口を慎む。


ここはあえてスルーした方がいい、と心の警報器が鳴ったからだ。


しかも甘いの嫌いなくせに
サイダーが好きとか、超矛盾してない?

サイダーも充分甘いと思うんですけど。



「まぁ、甘いのは確かに好きじゃねぇけど。」

「あたし壱星にチョコあげた事ないもんねー。」