一瞬でも勘違いしてしまった自分がたまらなく恥ずかしくて首を縮めていると、私とそんなに身長が変わらない名取さんの声が、ダイレクトに耳に入った。

「でも新庄さんと前原ちゃんじゃ、全然タイプが違うからなあ。残念でしたね、社長」

「……なにが残念なんだよ」

 面倒そうに答えてから、社長は私に顔を近づけていた名取さんの襟首を引っ張った。怖いもの知らずの酔っ払い営業マンは、社長に向かってぐりぐりと肘を突き出す。

「まったまたぁ。新庄さんがいなくなっちゃって寂しいくせにー」

「んなわけあるか! お前営業のくせに酒に飲まれすぎだ! もっと肝臓鍛えろ!」

「ええーなんすかそれぇ」

 社長に小突かれている名取さんを見ていたら、傍らに立っていた板倉さんにちょんちょんと腕をつつかれた。指先だけを動かして小さく合図する彼女に、背をかがめて耳を近づける。すると彼女は内緒話をするように声を潜めた。