社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~


 スティリスのメンバーは気さくな人が多い。

 近くの席になった人たちとは打ち解けることができたし、離れた席の人でもわざわざ話しかけにきてくれる人もいた。

 サーモンのマリネやカプレーゼといった前菜に、アヒージョやピザやパスタ。料理の皿がすべて空になる頃、離れた場所に座っていた内藤さんがいつもと変わらない無表情で声を張り上げた。

「みなさん、そろそろ時間です。帰る支度をしてください」

 飲み会の帰り際というのはだらだらしてしまいがちな印象だったけれど、内藤さんが仕切っているせいか、みんなてきぱきと身支度を整え始めた。

 店の外に出ると、まだ微かに風が冷たい。

 ビルに囲まれた細い通りからは、切り取られた狭い空しか見えなかった。やっぱり、地元で見られる星空とは全然違う。