金髪女子は席に押し戻され、営業の名取さんは社長に首根っこを掴まれて自分の席に連れ戻されていった。
「板倉、お前飲みすぎだよ。水飲んどきな」
森さんからグラスを渡されている彼女も、顔色は普通だけれどよく見ると目が据わっていた。水を一口飲み、息をついて私を見る。
「ごめん、前原ちゃん。あたしまで失礼なこと言っちゃった」
「いえ、大丈夫」
慣れてますし、自覚もしてましたし。と心の中で付け加えた。
離れた席について談笑をはじめた社長をちらりと見る。その左手は隣に座った名取さんの襟をしっかりつかんでいた。
あの大きな手が、私の背中に触れた。
『背中、丸めるな』

