社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~


 気さくな感じだけど、ちょっとだけ苦手なタイプの人だと思った。大学生の頃にやたらと女の子をナンパしていた飲みサークルの人たちが思い出される。

「ええっと、前原結愛です。よろしくおねがいします」

「まあ、飲んで飲んで」

 営業という職務柄お酒を飲む機会が多いだろうに、彼の顔はすでに真っ赤だった。ほどよく整った顔ににこにこと人の好い笑みを浮かべて私のグラスにビールを注いでくれる。

「いやーしっかし、びっくりしたよ。全然人を採らなかった社長がとうとう決めた人間だっていうから、いったいどんな子が来るんだろうなって楽しみにしてたらさぁ」

 にこにこというよりもへらへらという感じで笑いながら、彼はぽんぽんと私の頭を叩く。やたらとスキンシップの多い人だと思って少し体を引いたとき、彼がカウンタ―の方に向かって声を張った。