社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~


 新庄さんの後任ということらしいけれど、話を聞いていると、彼女がやっていた仕事が私に務まるとは思えない。

 数時間前に穏やかな微笑みを残して会社を去っていったショートカットの美しい人を思い出していると、

「前原さん、飲んでるー!?」

 いきなり肩を掴まれてびくりとした。

 顔を上げて目に入ったのは、ビール瓶を持った赤ら顔の若い男性だ。

 カジュアルな装いの人が多いこの場所で唯一スーツをまとっている彼は、先ほど乾杯の挨拶をしていた営業マンだった。

「ども、営業の名取匡(なとり たすく)、二十六歳でーす。以後よろしく!」

 スーツといってもストライプの柄が入ったしゃれたデザインだから、やっぱりアパレル関連の人という雰囲気がある。