「おまえを雇ってる時点でな」
森さんが言うと、金髪女子の板倉さんは思い切り顔をしかめた。
「うっさいよ、モリモリ」
「先輩にモリモリ言うな」
軽快なやりとりに笑いながら、私はカウンター席のスツールにひとりで座ってグラスを傾けている社長を見やった。普通の人だったら足がぶらついてしまいそうな高さのある椅子なのに、社長の脚は余裕で床に届く。
どうしてひとりであんなところに座っているのか不思議だったけれど、規格外に背丈のある社長には、テーブル席が窮屈なのかもしれない。
「採用基準……か」
確かに謎だ。
どこの会社でも苦い顔をされてきた私を、内藤さんだって首を横に振っていたのに、どうして社長は雇ってくれる気になったのだろう。

