社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~


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「それじゃ、前原さんの入社を祝って、乾杯!」

 まだ話したことのない営業の男性が高々とビールのグラスを持ち上げると、ほかの人たちも「かんぱーい!」と声を張り上げた。

 会社から歩いて五分のところにあるカフェ&バーは、木や緑をふんだんに使った森の中の一軒家という雰囲気のお店だった。何種類もの木材でできたテーブルや椅子とオレンジ色の照明が落ち着いた空間だ。

 こぢんまりとした店は今日は貸し切りらしい。二人掛けのテーブルを組み合わせて四人ずつ座っていたり、ソファ席に座っていたり、店内のあちこちにスティリスのメンバーが散らばっている。

「どう前原ちゃん、仕事慣れた?」

 隣でいきなりビールを飲みほした板倉さんは、専門学校卒でスティリスに入社して四年目。つまり私と同じ二十四歳だった。