「えっ、新庄さん、このあとの歓送迎会は来ないんですか?」
板倉さんが驚いたように新庄さんを見上げた。
「うん。これから空港に向かわなきゃいけないの」
「そんなぁ」
「ごめんね、近いうちに一度帰国すると思うから、そのときは会社に寄らせてもらうわ」
「新庄さぁん」
美しい花に引き寄せられるように、社員たちがわらわらと新庄さんを囲みにいく。それぞれの人と別れの挨拶をかわす彼女を見ながら、新庄さんの人気ぶりをぼんやり見ていた。すすり泣く人が出るくらい、彼女は慕われていたようだ。
そんな人の輪の向こう側で、社長が静かに席を立ったのが見えた。社長室に消えていく背中がなんとなく寂しそうに見えて、どういうわけか胸がぎゅっと締まった。

