社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~


「……余計なことは言わなくていい。さっさと行けよ」

 社長が急にぶっきらぼうな言葉を吐いて、私は驚く。彼は眉間にしわを寄せ、追い払うように新庄さんに向かって手首を振った。新庄さんが呆れたように目をまたたく。

「あなたね、いい加減に自分の気持ちは口にしたほうがいいわよ?」

「ご忠告、どうも。もういいだろ、辞める会社のことなんか忘れてさっさと消えろ」

 あまりの言い草に呆気にとられる。でも日常茶飯事なのか、ほかの社員の人たちはまったく意に介していない。

 まだ入社して五日目で、会社の雰囲気も社内の人間関係も全然わかっていないけれど、それでも社長と新庄さんが親密な仲だというのはよくわかった。ふたりとも、お互いを名前で呼んでいたのがその証拠だ。

「本当にもう、口が悪いんだから。本当は私の飛行機の時間を気にしてくれてるんでしょ?」