「みなさん、ありがとう。こんなふうに温かく見送ってもらえて、とてもうれしいです」
女神のような微笑を湛えて、彼女はひとりひとりをゆっくり見回した。私と目が合うと優しく頷いてくれる。がんばってね、と瞳が語っている気がした。
「この会社は私にとって子どもみたいなものだったし、みんなと離れるのはとても寂しいわ。でも、私は私で叶えたい夢のために頑張るから、みんなも体に気を付けて頑張ってね」
彼女は言葉を切ると、少しだけいたずらっぽい表情になって私とは反対側の隅に視線を向けた。そこには、ひとりだけ事務椅子に座って長い脚を組んでいる社長がいた。ふてぶてしさすら覚えるその姿を見て、新庄さんはくすりと笑う。
「優志くんをひとりにするのが唯一の心残りなんだけど……みんな、どうか彼を支えてあげてね。この会社がここまでやってこれたのは、間違いなくみんなのおかげよ。彼は全然そういうことを口にしないけど、いつもみんなに感謝してるんだから」

