「みなさん。すみません、ちょっといいですか」
振り向くとフロアの真ん中に内藤さんが立っていた。各々の席にいた社員たちが心得たように席を立って集まりはじめている。
扇状に立つ社員の真ん中、内藤さんの隣に、いつもの笑みを浮かべた新庄さんが並んだ。あっと思い、私もキャビネットを閉めて急いで集団の端に加わる。
「ご存じかと思いますが、ブランドマネージャーが本日で退職されます。新庄さん。長い間、本当におつかれさまでした」
内藤さんの言葉を合図にして、隅に控えていた金髪ショートボブの板倉さんが進み出る。
彼女が抱えていた暖色系の大きな花束を受け取り、新庄さんは嬉しそうに微笑んだ。美しい人が花を手にした姿はとても絵になって、思わず見とれてしまう。

