ふわりと爽やかな香りがして、胸が高鳴った。シャツにしがみついている私の腰を、大きな手が支えている。
「悪い、返す。お前視力いくつなんだ」
馴染んだフレームの硬さが耳に戻った途端、心臓が弾けた。急激にクリアになった視界に、ドアップの社長の顔がある。
このタイミングでメガネを戻さないでください!と心の中で叫びつつ、社長の美しさから目を逸らせなかった。
外国の俳優の巨大なポスターを前にしているような、奇妙な現実感のなさ。社長の顔が夢みたいに整っているせいなのか、それとも彼の顔立ちがびっくりするくらい私の好みのど真ん中だからなのか。
見惚れる、という言葉を初めて実感した気がする。
こんな至近距離で絶世の美男子と見つめ合うなんて、私の人生のピークはどうやら今日この瞬間らしい。

