「こいつ、前に取引先の女性担当者とやりあってさ。天敵なんだよな」
宥めているというよりは楽しんでいるという感じで彼が言うと、板倉さんが丸い目を会社の方向へと向けた。
「これまでは新庄さんがいたから、向こうもまだ大人しかったけどさぁ」
声が小さくなったと思ったら、板倉さんは急に振り向いた。
「前原ちゃん! 絶対に負けちゃダメだからね!」
掴みかかる勢いで言った彼女の手から、アイスコーヒーのカップが滑る。
「あっ」
カップの蓋が外れ、なみなみと入っていた液体がベンチに座っている私にぶちまけられた。シャツの胸を濡らし、スカートの上に焦げ茶色の水たまりができる。

