「というか、うちの社長って見た目があれだから優しそうって思われがちだけど」
言いながら、森さんがくすりと笑う。
「本当はめちゃくちゃ厳しいから、前原さんも覚悟しといた方がいいよ」
私は黒く光沢を放つデスクについていた社長を思い出した。繊細そうな外見とは違って、声を張り上げて社員を叱りつけていた彼を。ついでにガラス越しの強い視線がよみがえって、胸が音を立てる。
「そういえばあたし、社長が笑ったところって見たことない!」
「そうか? このあいだ、お客さんに笑いかけてたよ」
「ちがうよモリモリ! それはビジネススマイルじゃん!」

