「パソコンが苦手だって? 内藤女史の指導を受けてるらしいね」
森さんが穏やかに笑って、私は首を縮めた。
「パソコン以前に、キーボードと闘ってます……」
「慣れだよ慣れ。ゲーム感覚で練習すればブラインドタッチなんてすぐできるようになるから」
その前に自分のパソコンを買わなきゃいけないかも、と思った。調べものはスマホでできるし、必要なときは学校の端末を使ったり妹のノートPCを借りたりしていたから、私はこれまでほとんどパソコンに触ってこなかった。
「ところで前原ちゃんて、社長の知り合いかなにか?」
アイスコーヒーをすすりながら、隣に座った金髪女子の板倉さんが私を見上げた。質問の意味がわからず、一瞬考えてから両手を振る。

