大勢の人が行きかうホールの通路で、女性たちの視線をくぎ付けにしていたスティリス株式会社の代表取締役社長、新井優志。
切れ長で人を魅了するような力のある目にまっすぐ見据えられ、ふいに向けられた柔らかな微笑みに背筋を何かが駆け上がったことを覚えている。
あのとき既に、社長は私の外側だけでなく内側まで見てくれていたのだ。
まるで水滴が足元に落ちるように、あるいは蒸気が空へのぼるように、私の視線は自然法則に従って彼を捉えたけれど、社長の方も私に目を留めるのは自然なことだったらしい。
彼にとって、平均身長の女の子は視界にも入らないのだから。
邪魔だと思っていた背丈と胸。でも、それがあったからこそ、今こうして社長といられる。
「大女も、悪くないですね」
「ん?」
「小さい頃から……特に中学のときに男子に『でかい』てからかわれて、ずっとコンプレックスだったんです」

