「結婚を前提に、ていうのは本気だからな」
自身が名取さんに言い放った言葉を思い出したらしく、社長は切れ長の目をいたずらっぽく細めた。
「だからあとは、お前が隠したがるその体を、少しずつ開いていくだけだ」
うっすらと妖艶さを漂わせる目つきに、かっと頬が燃えた。
「しゃ、社長はいつから私をそんな目で……」
思わず胸を隠すと、沈黙が流れた。
一呼吸おいて彼がぶはっと噴き出す。そんなふうに破顔するところを見るのは初めてで、妙にどきどきした。
「ほんとはお前、自己評価高いんじゃないか」
くすくす笑いながら、社長は腕を伸ばして私を抱き寄せる。長い指を私の髪に差し入れると、耳もとで囁いた。
「初めて目が合った瞬間からって言ったら、信じるか?」
「え――」
驚く間もなく、唇を塞がれた。柔らかなキスを受けながら、私は思い出す。

