社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~


 社長の物言いはどこまでもそっけない。だけど裏を返せば素直といえなくもない。

 彼のことをよくわかっている新庄さんは最後には苦笑いを見せ、広げていた荷物をバッグに戻した。

「それじゃあ結愛ちゃん。優志くんをよろしくね」

「あ……はい」

「今度会うときは、あなたたちの顔合わせの時かしら」

「えっ」

 微笑みながら、ボブヘアの美しい彼女は来た時と同じようにヒールを響かせてスティリスを後にした。

「さて、と」

 がらんとしたフロアを見回して私に目を戻し、社長は凛々しい眉をひそめる。

「……なんで赤くなってる」

「え、いえ」

 自分の頬を両手で押さえながら、私は彼に背を向けた。外に漏れ出しそうなほど胸が高鳴り、顔がどんどん熱くなっていく。