社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~


 見ると、営業マンの彼が青い顔をしていた。さっきまでいきり立っていたのが嘘みたいに肩を落としている。

「……俺、帰ります。おつかれっした」

 ノートパソコンをカバンに押し込んでぺこりと頭を下げ、ワイシャツの背中がよろよろと玄関に向かっていく。

「あ、名取! ジャケット忘れてる」

 板倉さんがハンガーにかかっていた服に気づいて声を上げたけれど、名取さんは足を止めずそのまま出て行ってしまった。

「あーもう」

 板倉さんがジャケットを脇に抱えてリュックを背負った。

「私も帰ります。おつかれさまでしたー!」

 同期ふたり組が慌ただしく出ていくと、フロアにはしんとした空気が漂った。

 取り出した写真をすべてアルバムに収めた新庄さんが、含んだように微笑む。

「……私も、帰った方がいいかしら?」

「そうだな。邪魔だ」