「ダーリンが十五歳も上だったから両親に大反対されたの。結局押し切る形で籍を入れちゃったんだけど……そのせいで両家の挨拶もしてなかったのよね。それが最近ようやく親と和解して。こうして十年越しの両家挨拶が叶ったというわけ」
「身勝手な姉に振り回されて、こっちはいい迷惑だ」
吐き捨てるように言う社長とにこやかな新庄さんを見比べて、板倉さんがパンと両手を打った。
「じゃあ新庄さんが社長に『両親に会って』て言ってたのは、旦那さん側のご両親にってことだったんですね」
ひとりで興奮している板倉さんの横で、霧が晴れたような気分だった。
もやもやと残っていた陰りが、きれいに霧散していく。
「そう、だったんですね……」
「もう結愛ちゃんがいるから、私はお役御免でしょ」
くすりと笑う彼女に、社長は「ふん」と鼻を鳴らす。
「あら、どうしたの名取くん。元気がないわね」

