「最初の頃は、社内でも優志くんに言い寄る子が後を絶たなくてね、業務にも支障をきたしてたのよ」
懐かしむように言って、新庄さんは小さく微笑む。
「そういう子たちは結局辞めていったけどね。そうしたら後から入社した事情を知らない子たちが、私と優志くんを勝手にくっつけて噂し始めたの」
「なるほど……。新庄さんと付き合ってるなら、社長に言い寄ろうなんて思わないですもんね」
世界の重大な秘密事項でも手にしたみたいな嬉しそうな表情で、板倉さんは「納得だわ」とうなずいている。そんな彼女とは対照的に、名取さんは口から泡を吹きださんばかりに目を白黒させていた。
「だって、じゃあこの写真は、何の顔合わせなんですか」
「ああ。私、学生結婚でね」
新庄さんが写真を一枚ずつ入れ替えながら、昔を思い出すように優しい声を出した。

